デザイナーのための開業費と青色申告の記帳ガイド

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デザイナーのための開業費と青色申告の記帳ガイド

〜開業前の費用を無駄にしないための仕訳と管理の基本〜

デザイナーとして独立する前に、AdobeやCanvaを契約したり、パソコンを購入したり。
これらの支出は、すべて「開業準備のために使った費用」として、開業後に経費にすることができます。
この仕組みを「開業費」といい、青色申告をする個人事業主にとって大切な科目です。

開業費とは

開業費とは、事業を始めるために支出した費用のうち、開業前に発生したものを一時的にまとめておく会計上の資産です。
開業後に任意のタイミングで経費として計上できるのが特徴です。

【対象となる主な支出例】

  • デザインソフト(Adobe、Canva、Figma、ChatGPTなど)
  • 素材サイト(Freepik、Adobe Stock など)
  • 会計ソフト(マネーフォワード、freeeなど)の利用料
  • オンライン会議ツール(Zoomなど)
  • 学習・コミュニティ費(リベ大オンラインサロンなど)
  • 自宅兼事務所の家賃や電気・ガス・水道代の事業使用分

レシートがなくてもOK

開業前の支出でも、証拠が残っていれば経費にできます。
レシートを紛失していても、以下のような明細で代用可能です。

  • クレジットカードの利用明細
  • 銀行口座の入出金履歴
  • メールで届く請求書や領収書PDF

どの費用が何の目的で発生したのかをメモしておくことで、証拠書類として十分に認められます。


青色申告は「複式簿記」で帳簿をつける必要があります。
開業前に個人の資金で支払った費用は、「開業費/事業主借」で仕訳します。

例1:開業前にAdobeを契約した(クレジット払い)

開業費 13,000円 / 事業主借 13,000円

※事業主借は「個人が立て替えて支払ったお金」を意味します。

家事按分(自宅兼事務所の場合)

自宅を事務所として使う場合、家賃や電気代のうち「仕事に使った分」だけを経費にできます。
たとえば、全体の3割を仕事用として使っている場合の仕訳は次のようになります。

電気代10,000円のうち3割を事業用とする場合

まず全額を開業費として計上します。

開業費 10,000円 / 事業主借 10,000円

その後、家事分を除くための振替仕訳を行います。

事業主貸 7,000円 / 開業費 7,000円

結果として、3,000円(30%)が事業経費として残ります。

このように家事按分を使うことで、私生活分を除いた正確な経費処理が可能になります。

任意償却による節税効果

開業費は「任意償却」として扱われます。
これは、いつ・いくらを経費にするかを自分で自由に決められる制度です。

  • 開業後すぐに全額を費用計上してもよい
  • 利益が出た年に多めに償却して節税も可能
  • 未償却残があっても、期間の制限なく後から処理できる

事業の利益状況に合わせて柔軟に調整できるのが大きなメリットです。

事業主貸・事業主借の反対仕訳について

多くの初心者が迷うのが、「事業主貸」や「事業主借」に反対仕訳が必要かどうかという点です。
結論から言うと、基本的に反対仕訳は不要です。

これらは「個人と事業の間のお金のやりとり」を記録するための科目であり、損益計算書には影響しません。

  • 事業主借:個人が事業にお金を入れたとき(資金を立て替えた)
  • 事業主貸:事業のお金を個人で使ったとき(プライベート支出など)

つまり、開業費の計上で

開業費 13,000円 / 事業主借 13,000円

と記帳した場合、その後に反対仕訳を入れる必要はありません。
開業費を償却した時点で処理が完結します。

家事按分で

事業主貸 7,000円 / 開業費 7,000円

とした場合も同様です。
これは経費の調整仕訳であり、反対仕訳を入れると二重計上になります。

反対仕訳が必要になるのは、実際に「事業用口座と個人口座の間で資金を戻したとき」に限られます。

【例】
個人口座から事業口座に10万円入れた

普通預金 100,000円 / 事業主借 100,000円

後日、余剰資金を個人口座に戻した

事業主貸 100,000円 / 普通預金 100,000円

このように、実際の資金移動があった場合だけ反対方向の仕訳が発生します。
帳簿上の整合を取るための「形式的な反対仕訳」は不要です。

帳簿管理のコツ

  1. 記帳は週1回、または月1回ペースでこまめに行う
  2. 明細や領収書はGoogle Driveやクラウドに整理して保存
  3. クレジットカードや銀行口座を会計ソフトに連携して自動仕訳化
  4. 「どの支出が何のためか」を簡潔にメモしておく

開業後にまとめて処理しようとすると、経費漏れが起きやすくなります。
日常的に管理しておくことが、確実な節税につながります。

仕訳の基本ルールまとめ

内容借方貸方補足
開業前の支出(個人負担)開業費事業主借個人のお金で支払った場合
家事分の振替処理事業主貸開業費家事分を除くための仕訳
償却処理(経費化)開業費償却開業費任意のタイミングで全額OK

まとめ

開業準備で使った費用は、すべてあなたの「事業投資」です。
正しく記帳し、証拠を残すことで、無駄なく経費化できます。
開業届を出す前の支出でも、開業後に「開業費」として処理できるため、準備期間中の支出を丁寧に整理しておくことが大切です。


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